第6章 轟焦凍✕アコースティッコフィリア【音響愛好】
全く知らない曲の筈なのに、聞くたびに心が癒やされるようだ。
どこかで、いつか誰かが自分のために歌ってくれた事と重ねているのかもしれない。
「今日も、きれいだな……」
頬杖を付きながら、ポツリと呟く。
小さな声は、風と共に消えていった。
あぁ、なんてきれいな歌
なんて素敵な声
なんて美しい音だろうか。
────もっと、聞きたい。沢山沢山、より多くの彼女の音を聞いてみたい。
そう思うようになるまで、あまり時間は掛からなかった。
オレンジ色だった夕日も沈みかけ、段々と世界が暗闇に包まれていく。
そんな中で、彼女は、木凩は、何をすれば美しい音が聞こえるのだろうか。
その事ばかりを考えていた。
嗚呼────────これは、きっと、恋だ。
木凩の声に、歌に、音に、自身に、きっと俺は恋をした。
「早く何とかしないとな‥‥‥」
小さな声は誰にも聞こえる事は無かった。