第6章 轟焦凍✕アコースティッコフィリア【音響愛好】
音が、聞こえる。
とても、とてもきれいな音。
────否。
それは音というよりも、歌声と言ったほうが正しい。
オレンジ色の夕日に照らされて幻想的に見える雄英高校に
さらさらと吹くそよ風と共に聞こえる美しい歌声。
ヒーロー科1年A組の轟焦凍は、最近日課のように
放課後誰も居なくなった教室窓を開けてその声を聞いていた。
どんな名前の曲なのかは分からない。
しかし、誰が何処で歌っているのかは知っている。
ヒーロー科1年、同じクラスの木凩すず。
場所は中庭のベンチ。
初めてその歌声を聞いたとき、普段は何方かといえばおとなしい性格の彼女が、放課後だからといってこんなにも大胆に外で歌っているのは以外だと思った。
しかし、聞き続けるに連れて、そんなことはどうでも良くなった。