第2章 及川 徹✕サディズム【加虐性愛】
今の私では、泣きじゃくる彼を抱き締めることが出来ない。
……何故なら、私の手は、腕は、カッターで切られた痛みでとても動かせるようなモノでは無いから
今の私では、彼に対して『大丈夫』と言う言葉をかけてあげる事もできない。
……何故なら、私の口は殴られ、口内から血を出し、喋れるような状態ではないから。
床は私の血で濡れ、彼もそんな私を泣きながらもいたわってくている。
‥できることなら私だって泣きたい。
声をあげ、この場から逃げ出したい。
でも、私はそんな事をしない。
‥‥したくない。
この傷は、この痛みは、
徹が‥‥‥‥及川 徹が
本当にやりたくてやった訳ではないと言う事を、ちゃんと分かっているから。