第4章 葉は緑、空は雨色
ドキドキが止まらない。
一君…すごくかっこよかった。
馬鹿だな私…見なきゃよかったのに…
夢主(妹)を探す気力が無くなって、体育館の外の壁に寄りかかる。
雨上がりの匂いに包まれながら、体育館から聞こえてくる竹刀の音とかけ声を聞きながらぼーっとする。
ふと気付くと、外から中を見学している人達がざわざわと騒がしくなった。
ぱたぱたと私の前を走って、中を覗きに行く人もいた。
なんだろ?まあ、いいや。
見学しに来たわけじゃない。
さっきよりもなんだかすごく人が増えて、少し中が気になるけど…
「次、薄桜高校の沖田さんだって!」
どんどん増える人の中から、そんな声が聞こえた。
うわぁ…総司ってすごいんだ…
耳を澄ませれば、総司の名前が沢山聞こえる。
ちょっと覗いてみようかな?とも思うけど、あまりの人の多さに諦めた。
っていうか…夢主(妹)を探さないと…
知らない制服と袴姿の人達に混ざって、なんだか途方に暮れてきた。
人集りから離れたくて少し歩くと、一人で素振りをしてる袴姿の男の子が見えた。
着物の襟元には"薄桜高校"の文字。
辺りを見回しても彼は一人だった。
素振りを止めてペットボトルのお水を飲み始めたから、そっと近づく。
「あの〜」
お水を飲んでる横から声をかけると、お水を飲みながらちらりと目だけがこちらを向いて、次の瞬間…
「ぶほっげほっ…ごほっ…」
と、その男子は盛大にむせ返ってしまった。
おもわず、大丈夫?と、背中をさする。
むせて下を向いたままのその男子を覗きこむようにして、もう一度「あの〜」と、声をかけた。
すると、ものすごい早さで後ろに飛び跳ねる。
「な…なんですか?」
驚かせちゃったかな?それにしても驚き屋さんでかわいい。夢主(妹)と同じかな?それとも2年生かな?
思わず笑ってしまいながらも、本来の目的を思い出した。
「あ、薄桜高校のヒトだよね?1年の苗字夢主(妹)の姉です。」
ぺこりと軽くお辞儀をしてから、本題に入る。
「夢主(妹)がお弁当忘れちゃって…これ、渡してもらってもいい?」
「あ…えと…はい。」
そう言ってお弁当を受け取ってくれた。
えー…っと…少し近づいて、胸元の名前を確認する。
「藤堂君?っていうのかな?ありがとう。」