第4章 葉は緑、空は雨色
あーあ…雨か…
両親共に仕事で、夢主(妹)は剣道の試合の日だとかで、朝から出て行った。
麦茶を飲もうとキッチンへ行くと…夢主(妹)のお弁当が置いてある。
忘れちゃってる…
すぐに夢主(妹)にLINEを送ると、焦った返事が返ってきた。
もう会場に入ってしまって、そろそろスマホも見れなくなるみたい。
場所だけなんとか聞き出して、届けに行く事にした。
まったくも〜って、ちょっと怒りたい気持ちと、用事が出来た嬉しさが混ざる。
夢主(妹)の大会の様子を見るのも久しぶりで、ちょっとわくわくするなあ。
制服のが目立たないかな?そんなことを考える。
休みの日に制服なんて着た事もないけど、なんとなく制服に着替えて、出発した。
会場の場所を検索して、行き方を調べながら電車に乗る。
目的の駅に着くと、傘がいらないくらいの霧雨だった。
なんとか会場に着くと、袴姿や制服の男女がちらほら見えて、少し安心をする。
えーっと…夢主(妹)は…
夢主(妹)の姿を探そうとして、はっと気づいた。
…一君もいるよね?
何にも考えずに、夢主(妹)の所に行って、そのまま試合を見れたらなー…なんて考えてたけど…
無理!!
ぜーったい一君には気がつかれないようにしなきゃ。
別に一君に会いに来たわけじゃないのに、なんだか変な緊張をしてきた。
大会の会場である体育館を、他の見学者に混ざってそっと覗く。
全体を見回してみても、夢主(妹)がどこにいるのかさっぱりわからなかった。
一度その場を離れて、体育館の外側を回ってみる事にした…けど…
もし一君にばったり会っちゃったら…って考えると、なんだか気が重い。
体育館の中から鋭い声が聞こえてきて、その声につられるように、再びそっと覗いた。
………っ
覗いた入り口からは一番遠い場所で、防具を頭に被ってても、それが一君だってすぐにわかった。
心臓をぎゅって誰かに鷲づかみされたみたいに苦しくなる。
それでも、試合を終えて礼をし終わるまで、一君の姿から目が離せなかった。