第2章 サクラ散る頃
急いで家へ帰ると、目的の本をニ冊持って再び自宅を出る。
今から向かうとメッセージを返し、歩く速度を早めた。
雪村の笑顔が見たかった。
もしかしたら本を貸すのは俺の自己満足で、雪村は本当は必要ないのかもしれないが…それでもきっと、俺に笑顔を見せてくれるであろうと想像すれば、早く雪村に会いたいと思ってしまう。
楽しみに待ってますね、そんな返信が来た。
雪村の家の少し手前で、もう少しで着くと送る。
雪村は家の前で待っていて、俺の姿を見つけて小さく手を振っていた。
「わざわざ本当にありがとうございます。先輩、歩くの早いですね。」
ふわりと笑って言う。
俺は本を渡し、ふと…気になったことを口にする。
「…迷惑ではなかったか。すまない、俺のお節介だったかもしれない。」
そう言えば、
「迷惑だなんてとんでもない。とっても嬉しいです。」
さらに可愛らしい笑顔でそう言ってくれた。
俺は今どんな顔をしているのだろうか…だらしのない緩んだ顔になっているかもしれない…
思わず照れてしまったことを隠そうと、それならいいが、と少し顔を引き締めた。
「あの、お礼…にしてはこんなもので申し訳ないのですが…パンなんですけれど…毎日手作りをしていて…今朝の残りなのですが、よかったら召し上がってください。」
と、袋を差し出される。
ありがたくいただこうと受け取り、手作りな事を褒めれば、
「いえ、たいしたものではないです。あっでも、まずくはない…はずですので…」
と、少し顔が赤くなった。
雪村の気遣いがうれしい。
そのまましばらくたわいもない話をし、帰路につく。
自宅についてからもたいした内容ではないメッセージのやりとりが続いた。