第2章 サクラ散る頃
「剣道部に入ってよ。君はもっと強くなれる。」
いつもちょっと意地悪な笑みを浮かべてて、からかうようなことばっかり言ってる沖田先輩が、真剣に話をしてくれているのがうれしく思える。
たぶん顔に出てたのだと思う…
「あははは、夢主(妹)ちゃん、すごくうれしそうだね。」
私の顔を見て、沖田先輩は優しく笑ってくれた。
それから、部員のみなさんに「部長相手にすごい!」と、ほめられて、なんだか照れる。
「マネージャー希望の雪村さんも、総司のところへ行っておいで。」
井上先生が千鶴に言う。
「一君、このコに剣道の用語とか道具の名前とかルールとか…そういう基本を教えてあげて。」
斎藤先輩が沖田先輩に呼ばれて、千鶴にいろいろ教えることになったみたい。
よかったね、千鶴。…でも二人のツーショットはちょっと複雑だったり。だって…ほら、二人並ぶと…なんかこう…同じ色に見える、というかなんというか…。ぴったりだな…なんて思うと、お姉ちゃんのことを思い出して切ない気分になってくる。
「夢主(妹)ちゃん、ぼーっとしてたらダメだよ。入部するまでは特別だから、僕と一緒に練習しよう。」
そう言って、いつもの沖田先輩の顔になった。ん?でもなんか優しいかも?よくわかんないや。
先輩と一緒なのがうれしい。
「そんなに僕と一緒がうれしいの?夢主(妹)ちゃんさっきからニコニコだね。」
しまった!恥ずかしい!
「また赤くなった。ほんとにかわいいね。」
ああもう、沖田先輩のペースに巻き込まれてる…持ち直せ私。
練習内容について話をしていた沖田先輩が一瞬動きを止めて眉をひそめた。その直後、
「―――っ」
斎藤先輩が体育館の入口に走って行くのが見えた。
「ごめんね、夢主(妹)ちゃん。ちょっと待ってて。」
…な、なんか沖田先輩が怖い。とりあえず、斎藤先輩のところへ歩く沖田先輩の後に続いた。