第11章 夏の終わりと蝉の声
びしょ濡れだった僕は、そのままお風呂場に案内をされて、シャワーを借りることになった。
「お父さんのだけど、多分これはあんまり着てないっぽいから着てね。」
夢主(姉)ちゃんは、なんだかちゃっちゃかしてて、小さなおばさんみたいに世話をやいてくれる。
お風呂から出て、出されたTシャツとスウェットを着て、どこに行っていいかわからないから、とりあえず音がする部屋に向かった。
さすがに他人の家は緊張する。
「夢主(姉)ちゃん?」
音がする部屋を覗いてみれば、なんだか美味しそうなにおいがした。
「あ、総司。あはははは!やっぱりお父さんのじゃ短くてつんつるてんだね。まあ、今制服洗って乾燥機に入れちゃうから、乾くまで待ってて。」
好きに過ごしててー…なんて、テレビのリモコンを渡されて、何か飲む?なんて聞かれる。
「ありがとう夢主(姉)おばちゃん。」
おばあちゃんの家に来たみたいだな…。
「はいはーい。」
夢主(姉)おばちゃんって言葉に反応してくれたっていいのに、さらっと流されちゃった。
まあいいや。
「夢主(妹)は千鶴ちゃんの家に泊まるって。」
「ふーん。」
そっか…夢主(妹)ちゃん帰ってこないのか。
なんだか少しほっとしたような、残念なような…そんな中途半端な気持ちになった。
「はいっ」
ソファの下に座って、立て膝をついてぼーっとしてると、目の前のテーブルにトン、とサイダーが置かれた。
「総司さー…夢主(妹)に来てること言ってもいい?」
「駄目。」
「まあいいけどさ。じゃあ左之助呼んでいい?」
あー…まあそうだよね。
今更夢主(姉)ちゃんとは、同じお布団に入っても何もない自信はあるけど…それは僕達だけの見解だしね。
それからぼーっと、サイダーを飲みながら、普段は見ない夕方のニュース番組を眺める。
内容は頭に入って来ないし、夢主(姉)ちゃんはなんだか忙しく動いてて居ないから会話も無かったけど、なんだかとっても心地が良かった。