第11章 夏の終わりと蝉の声
左之先生も来るらしくて、夕飯を食べて行く事になった。
三年間、それなりに仲良くやってきたけど…そういえば初めて家に来たなあ。
それはきっと僕が男で、夢主(姉)ちゃんが女の子だからなんだよね。
「あーあ。性別ってめんどくさいね。」
夕飯の準備がひと段落したとかで、ソファに座ってサイダーを飲んでる夢主(姉)ちゃんに、そう言ってみた。
「ん?なんで?総司は男の子じゃ嫌なの?」
女の子になりたいの?なんて真剣に聞いてくる夢主(姉)ちゃんの頭の悪さにはもう慣れてるけど…
「僕が女の子なら、仲良いままずっと一緒にいられるのかなって。」
これが夢主(姉)ちゃんに向けた言葉じゃないって事くらいはわかってくれたみたいで、
「そう?私は左之助とは友達とは違う関係になれて嬉しいけど。」
なんて、直球な答えが返ってきた。
「まあ…私って総司くらいしか友達いないからわかんないけど…総司には見せれない部分とかあるし…」
「いやらしいなぁ。左之先生に何見せてるの?」
「違くて!好きになった人には触りたいし触られたいの!友達以上になりたいの!総司は違うの?」
ほんと…夢主(姉)ちゃんは見かけによらず純粋だよね。
こーんな恥ずかしい事をさらさら言えちゃうなんてさ。
好きな人には触りたいし触られたい…か。
「どうかな…」
確かに夢主(妹)ちゃんに触れたいと思って、からかっちゃったりしてるけど…それ以上はどうかな…。
今まで通りの会話とか空気とか…そんなものまで壊してしまいそうで怖い。
「総司…そういえば、1年生のはじめの頃に他校の彼女いなかったっけ?」
誰のことだろう?彼女?
「いないよ?」
「そうだっけ?なんかよく駅でいちゃついてなかった?」
ああそうだ…
中学生の時は来るもの拒まず…だったんだよね…それの残りかな。
「ああ…彼女とかではないよ。」
「そういえば最近そういう総司見かけないなぁと思って。」
どうでもいいなんて言ったら可哀想だけど、僕にほいほいくっついて来る女の子は楽だった。
傷つけても、罪悪感すら感じなかった。
でも…夢主(妹)ちゃんは違う。
傷つけたくない。
夢主(妹)ちゃんとの関係は、きっとガラスよりも脆い。
僕は今を壊したくないんだ。