第11章 夏の終わりと蝉の声
あれでもないこれでもない、と、アイスを選ぶ。
夏限定のラムネ入りのアイスを買ったら、平助先輩も同じので…可笑しくて楽しくていっぱい笑った。
アイスを食べ始めた頃、物凄い勢いのゲリラ豪雨にみまわれて、コンビニの目の前にあったバス停の屋根に隠れて雨宿りをする。
「なあ…今日は総司部長と帰らなかったんだな。」
突然平助先輩の口から出た、沖田先輩の名前にちょっと慌てると、
「付き合ってんの?」
なんて聞かれて、さらにびっくりした。
「まさか!付き合ってませんよ!」
自分で言った言葉に、事実なのに思ったよりも落ち込む。
まさか…付き合ってませんよ…かぁ…
「沖田先輩はどう思ってるんだろ…」
思わずポツリと呟いてしまった。
ザーザーと降る雨の音は、なんだか心地いい。
「お前は?総司部長の事好きなの?」
ど直球な平助先輩の質問は、なんだか清々しいくらいストレートな言葉で…からかってる様子もなかった。
「はい…好きです…」
改めて声に乗せて発するのは、本人の前でなくても緊張する。
「そっか…」
アイスをとっくに食べ終わっちゃってる平助先輩の横顔を見上げれば、なんだか真剣に考えてくれてるみたい。
私のアイスはまだ半分ある。
「平助先輩食べるの早いですね!よかったら私のも少しどうぞ!っておんなじアイスだけど…」
なんて、少し重くなった空気を変えたくて明るく言えば、平助先輩は私の口元の高さまでかがんで、私のアイスをぱくりとかじった。
「サンキュー…」
明るく変えたはずの空気は、なんだかさらに悪化してるみたいに重たいような…
「あ…沖田先輩は優しいから私が勘違いしちゃってるだけかもで…告白しようかと思ったんですけど、なかなかできなくて…」
なんとか空気自虐で笑いながら話す。
でも…
「苦しいなぁ…」
勝手に涙が出てきてしまった。
「うわあ!ごめんなさい!目にゴミが!!」
慌てて笑いながら目を擦れば…
「夢主(妹)笑わなくていいよ。別に俺はお前が今泣いても平気だからさ。全部吐き出しちまえば?」
なんて言ってくれる平助先輩は、いつもの明るい声のトーンより、少し低めの落ちついた声。
「うー…」
それからしばらく私はザーザーと降り落ちて来る雨と一緒に泣いてしまった。