第11章 夏の終わりと蝉の声
まだ明るい帰り道。
ヒグラシの声よりスズムシの声が勝ってる。
最近は一君と千鶴の間に入るのもなんか悪くて、毎日のように言い訳をつけて別に帰る。
今日は駅前の本屋に寄るとか言っちまった。
駅は家とは反対だけど、まあいいや…最新刊の漫画が売ってたら買うかな。
そう思って歩き始めると、目の前に夢主(妹)が歩いてる。
あ、そっか。
夢主(妹)はこっち方向だったよな。
少し前を歩く夢主(妹)に駆け寄って、
「おつかれー」
と、声をかけた。
「あ、平助先輩おつかれさまです!さっきはすみませんでした。」
なんだか元気が足りない夢主(妹)に、前に総司部長がアイスを食いに誘っていた事を思い出して、
「なんだよ。元気ねえなあ。アイスでも食おうぜ!」
と、誘ってみる。
つっても…総司部長と同じなのも気が引けて、
「コンビニだけどな!」
と、明るく言えば、
「いいですね!夏限定が沢山ありましたよ!」
少し元気になった夢主(妹)は食いついてくれた。
コンビニに寄って、アイスコーナーであーでもないこーでもないって、たかがアイスなのに、二人で真剣に選ぶ。
「あーやっぱりそっちにすればよかったかなぁ?」
って、会計後に俺のアイスを見ながら言うから、
「ちょっと食うか?」
なんて自然の流れで言っちまった。
「いいんですか?やったー!」
と、元気よくかぶりついた後に、
「あわわわすみません!!」
なんて少し赤くなってる。
夢主(妹)がつけた歯型を、俺の真顔を総動員させて、何もなかったように食って、
「なんだよ?」
って笑ってやった。
赤くなってんじゃねーよ。
俺までなんだか心臓がもぞもぞしてきたじゃん。
コンビニの前でアイス食いながら立ち話して、夢主(妹)を駅まで送ってった。
話した内容は、好きな漫画の事だったり…アイスだったり…なんでもないことばっかりだったけど、夢主(妹)が、「わかります!」だとか、「それ私もすきです」だとか…同調?っつーか共感?つーのか…してくれると、すごい嬉しかった。
けらけらと笑う顔がなんか忘れられない。
俺のアイスを食った後の、照れたように赤くなったのが、すごく可愛かった…なんて…
そんなことばっかが頭に浮かんだ帰り道だった。