第11章 夏の終わりと蝉の声
「あ、おはよう平助君、今日は早いね。」
せっせと麦茶の準備をしてる千鶴のが早い。
目覚ましのアラームより早く目覚めちまったから、手持ち無沙汰で早く部活に来た。
結構早く来たつもりだけど、一君と千鶴がもうすでにいて、こいつら何時に来てるんだ?って驚く。
稽古の準備をしてると、
「おはようございますっ!!」
元気な夢主(妹)の声が聞こえてきた。
こいつが体育館に入ってくると、まわりがすげえ明るくなる気がする。
「お、夢主(妹)!今日も元気だな!張り切り過ぎんなよ!」
ぱたぱたと走ってウォーミングアップをする夢主(妹)に、新八先生が声をかけた。
さっきっから心臓が早い。
少し息苦しいかも。
風邪か?
「あ、おはようございます平助先輩!あのアイスの新しい味、昨日お姉ちゃんが食べてました!お姉ちゃん一口もくれなかったんですよー!やっぱり違うコンビニにはあったのかなぁ?」
昨日あーだこーだ言いながら買ったアイスの話題。
なんてことない話だけど、なんか…昨日からの繋がり感がくすぐったい。
特に俺の返事を待たずに、体育館を走る夢主(妹)の所まで、ダッシュをして追いつくと、
「今度はあっちのコンビニ行こうぜ!」
って言った。
たったそれだけのことを言っただけなのに、すげえ緊張して…また心臓がやばい。
部活も終わりかけた頃…
「おお!総司!」
新八先生の声に、一斉に出入り口を見ると、総司部長がいた。
「あ、僕を気にしないで続けてよ。たまたま学校来たから寄っただけだし。」
「まあ入れよ。」
相変わらずな総司部長に、新八先生もなんか嬉しそうだ。
「わあっ!沖田先輩!」
手洗いから帰ってきた夢主(妹)が総司部長に気がついた。
その顔は…すごい嬉しそうで…
頭が理解するより先に、心臓が先に反応した。
胸の奥が何かが侵攻してきた勢いで苦しくなる。
「夢主(妹)ちゃん。今日も可愛いね。」
総司部長はいつも通りだ。
夢主(妹)は嬉しそうに照れてて…こんなの今まで当たり前の光景だったのに。
心臓が苦しくてその場にいるのが辛くなった。
俺は夢主(妹)を好きなのか?
頭がぐちゃぐちゃでわかんねえ。
「ちょっと走ってきます」
井上先生にそう告げて、体育館を飛び出した。