第11章 夏の終わりと蝉の声
アイスを食べてる間も、その後の帰り道も、沖田先輩と私はたわいの無い話をしてただけだった。
さっき告白をしようとした道辺りに来ると、勝手に緊張してしまったけど、今度は告白をするような雰囲気にもならなかった。
家の前に着いて、お礼をする。
これで一緒に帰ってくれるのは最後かもしれない。
2学期になれば、部活のある私とは帰宅時間が違うし・・・。
そう思ったら、「ばいばーい」と、軽く手を振る沖田先輩を、
「沖田先輩っ!!」
やっぱり好きですと伝えたくて、呼びとめた。
「ん?」と、振り返る沖田先輩に、
「わたしっ・・・」
と、勇気を振り絞る声と、
「夢主(妹)ちゃん。」
と、私を呼ぶ沖田先輩の声はほぼ同時だった。
「頭に毛虫がついてるよ?」
次の言葉を出す前に、沖田先輩はそう言って、「ほら!そこ!」と、指を差してくる。
「え?毛虫?」
と、あわてて頭をおさえて探していると、
「うそだよ~。あはは。夢主(妹)ちゃんお疲れ様~。」
なんて笑いながら手をひらひらさせてる沖田先輩は、随分遠くまで歩いていた。
結局、告白させてもらえなかったな・・・
ん?告白させてもらえなかった?
沖田先輩はわざとさえぎったのかもしれない。
そんな予感がして、ざわざわと胸が気持ち悪くなった。
あれから、沖田先輩に会ってない。
引退しちゃったけど、もしかしたら夏休み中は顔を出してくれるかも・・・と思ったけど、沖田先輩は来なかった。
それは、新部長である斎藤先輩への気遣いなんだろうなって思ったけど、すごく寂しいのと・・・やっぱりあの日の帰り際がひっかかってしまって、気分は落ちこんだまま。
おでこにキスしたくせに。
どうして好きって言わせてくれないんだろう。