第11章 夏の終わりと蝉の声
大会の終わりに、三年生の先輩達ひとりひとりに色紙とお花を渡す。
こんなにこの瞬間が寂しいなんて。
沖田先輩には私がお花を渡した。
「今までありがとうございました。」
泣きながらそう言った言葉は、たぶん何言ってるかわからないくらい濁音がついてたと思う。
「あはは。これで会えなくなるみたいじゃない。学校にはしばらくいるんだし、そんなに泣かないでよ。」
そうやっていつものように笑う沖田先輩も、少しだけ寂しそうに見えた。
「次の部長は一君だよ。一君は僕より厳しいんじゃないかな?みんな頑張ってね。」
ぽん、と斎藤先輩の肩を叩く。
それから、部員ひとりひとりに短いけど的確な言葉をくれた。
「次は・・・夢主(妹)ちゃん。考えすぎちゃう所あるよね。試合にもそれが出ちゃうから、どうせ考えるならポジティブにね?」
沖田先輩にはなんでもお見通しなんだろうな。
今日の試合中も、相手がすごく右手をかばうのが気になって、どうすればいいか、とか、その隙をつくのは卑怯ではないか・・・とか考えてしまった。
見ててくれたのかな?
やっぱり沖田先輩はかっこいい。
「はいっ」
渾身の返事を・・・と思ったら、思ったよりも大きな声で返事をしてしまって恥ずかしかった。
「あはは。でもそういう元気な夢主(妹)ちゃんがかわいくって好きだよ?」
なんてさらりと言う。
「さて。おしまーい。みんなお疲れ様~。」
しんみりする暇なんて与えないとばかりに、軽い感じで解散をする沖田先輩。
帰る準備が終わって、みんなで帰路につく。
いつものように沖田先輩は私と同じ駅で降りてくれて、二人だけになった。
こうやって歩くのも最後なんだと思うと、胸が押しつぶされそうなくらい苦しくなる。
そう思ってるからなのか、いつもみたいに会話が出来なくて、無言のまま二人で歩いた。
「あの、沖田先輩!大会の賞品いりますかっ!?」
沈黙に耐えられなかったのと、これが最後なのが寂しくて、勇気をふりしぼってそう言えば、
「んー・・・どうしよっかなー・・・」
と、沖田先輩の返答は想像と違った。