第10章 【番外編】対煩悩戦の始まり
どれにしようかな・・・と本当に可愛くって、食べるのがもったいないカップケーキ達をじーっと見ていれば、
「全部お前のもんなんだから遠慮すんな?」
とさのすけは笑ってる。
これにしよう、と手に取ったピンク色のクリームの、おもちゃの指輪みたいな艶々でキラキラのチェリーが乗ったカップケーキを手に取る。
一口食べれば、見た目から想像するよりすごく美味しかった。
「おいしい!!さのすけも食べなよ~!」
さのすけの方を見てそう言えば、
「ん・・・俺はこれでいい」
と、私の口元に付いたクリームを自分の舌で舐め取る前に、さのすけがペロリと舐めた。
「甘いな・・・」
何事も無かったようにそう呟くさのすけは、ずるい。
そんな事をされてしまえば、私はキスをしたくて仕方なくなってしまう。
じーっと、さのすけの唇を見ていれば、
「なんだよ?俺にもクリームついてるか?」
なんて言うものだから、
「うん。ついてるよ?」
と、言って、そのままさのすけの胡坐の上に乗っかって、ペロリと同じように舐めてみた。
「ウソだよー」
舌を出しておどけて見せれば、ぐっと背に腕がまわされて完全にさのすけのひざの上に収まってしまう。
そうなれば近い距離が恥ずかしい。
けど・・・
さのすけの髪の毛をさらりとかきわけて、頬を両手で包んでから、さのすけの唇に軽くキスをした。
「大好きだよ?」
溢れてくる想いを言葉に乗せて。
さのすけの目を見てそう言えば、見下ろしているその目はとても優しくて・・・吸い寄せられるように、もう一度唇を近づける。
今度はさのすけの唇が先に触れて、それは軽いキス・・・ではなくて、唇を食べられちゃいそうな勢いだった。
さのすけの舌が口の中に入ってくる。
「・・・んはぁっ」
息苦しくなって、変な声の息が漏れた。
なんだかすごく気持ちいい。
少し唇が離れると、それでもまだ恋しくて、唇を目でおいかけてしまう。
近かったさのすけの顔が遠ざかっていく。
これでおしまい?
もっとしてよ。
そんな思いでいっぱいになった。
「さのすけ?キス、もうおしまい?」
思わずそう言えば、困ったように笑って、
「おしまいだ」
と、言われてしまった。