第5章 夏の暑さと恋模様
千鶴とクラスのみんなに挨拶をして、沖田先輩と下駄箱へ向かう。
相変わらず沖田先輩の隣はドキドキする。
「夢主(妹)ちゃんそんなににこにこして…僕と帰るのそんなにうれしい?迎えに来てよかったなぁ。」
いつもの顔でいつもの調子で、飄々とそんなことを言ってる沖田先輩。
沖田先輩は、ドキドキしたりするのかな?
ちらりと沖田先輩の横顔をのぞき見する。
その視線に気がついて、沖田先輩は「なあに?」と言いながらにこりと笑ってくれる。
バッと目を逸らして、「なんでもないです!」と言って、歩いてる道に目線を移しながら、会話を探す。
「もうすぐ夏休みですね!」
夏は大好きだ。
去年の夏は受験勉強でほとんど潰してしまったから、今年は夏を満喫したい。
う~!わくわくしてきた!
「はは。夢主(妹)ちゃん、今もう夏休みのことしか考えてなかったでしょ?」
沖田先輩は笑ってる。
しまった…言ったそばからわくわくしてきて、夏休みのことしか考えてなかった!
ふと気がつくと沖田先輩は私の手をとっていて、私達は手をつないでいた。
「えぇっ!?」
びっくりして、手をはなそうとすると、
「だーめ」
そう言われて、さらに強く握られた。
「夢主(妹)ちゃんがにこにこ考え事してる時って、まわり見えてないから危ないんだよ?今だってそこに溝あったの気がつかなかったでしょ?」
私達が歩いてる道は、一昨日から整備中の為にでこぼこしていてうっかりすれば転んでしまいそうな道になっていた。
足元のでこぼこした道を見ると、溝にすっかり足を入れてしまいそうになっている。
「ね?」
クスクスと笑いながら、沖田先輩は私の手を引いて歩く。
ドキドキMAXで死ぬかもしれない…
繋いでる手に全神経が集中してしまって、なんだかうまく歩けない。
「夢主(妹)ちゃん…なんだか歩くの下手くそだよ?」
沖田先輩は楽しそうに私を見て、いつもの帰り道を帰る。
先輩にとって、私はいったいなんなのだろう。
そればっかりが脳内を占める。
でも・・・今のこの感じがうれしいから、深く考えるのはやめた。
夏休みも部活で会えるし…
合宿もあるし…
ほんとは沖田先輩と海とか行けたら最高だけど…そんなの贅沢だよね。
あっと言う間に家に着いて、沖田先輩にお礼を言った。