第5章 夏の暑さと恋模様
これはもう勝手に眠りに行くしかない、と、立ち上がった瞬間…
あれ???あれれ??
足に力が入らなくて、目の前が真っ白になった。
気がつけば山南先生に抱きかかえられてる。
もう、一人で立てる、と、軽く山南先生の体を押してみるも、びくともしない。
なんか…原田先生といい、山南先生といい…オトナってずるいなぁ…とかぼーっと考える。
あれよこれよと私が口を挟む間もなく、原田先生が私を送ってくれることになった。
具合の悪さはさっきより悪化してる気がするけど、まさか原田先生に送ってもらえることになるなんて…ちょっと…ううん…かなりうれしいかも。
失恋騒動の時はかなりお世話になった。
でもあれ以来、先生と二人になる機会がなかった。
たまに体育準備室の前をふらついてみるも、用もなしにドアを開けて先生に会いに行くことができなかった。
原田先生の車の中は、先生のにおいでいっぱいで…やっぱり落ちつくなぁなんて思う。
送ってくれるのが原田先生でよかった。
そんなことを口にすれば、私のわがままならいつでも聞くとか言い出す原田先生。
ずるいなぁ。
女子生徒に一際人気なのがわかる。
こんなこと言われたらひとたまりもないし。
笑って返せば、それは本当で、しかも私限定とか言ってる。
やばい。
なんか…ドキドキする。
なにこれ。
原田先生は女の子の扱いになれてて、うまくて…きっとみんなにそうなんだって…今まで心地好く流されてきたけど…
その優しさが…私限定だったら?
体もだるくてきっと熱もある…ぼーっとする頭で考えてたら、具合の悪さとは別のドキドキがはじまった。
今まで甘い言葉を言ってもらっても、抱きしめてもらっても…こんなにドキドキしなかったのに。
きっと熱があるからだ。
「何照れてんだよ」
あ…ばれた。
恥ずかしいな…。
っていうか先生…どんだけ甘いこと言ったかわかってんの?そんな普通な顔しちゃってさ。