第5章 夏の暑さと恋模様
そんな浮かれた心とは裏腹に、具合はどんどん悪くなるのがわかった。
先生は、病院まで連れていってくれて、点滴を受けるはめになった私のために、学校になかなか戻れなくなってしまった。
点滴を受けてる間に一度学校へ戻ったみたいだけど、病院から出る頃には、先生は私とずっと一緒にいてくれた。
もうすぐ家だ…
先生は…やっぱ帰らなきゃだめだよね…
熱のせいか、なんだかさびしい。
飲み物を買いに行ってくれてる間も、なんだかさびしくてしかたなかった。
「先生…まだいてくれる?」
私のわがままなら聞くって言ったよね?
だったらまだ帰らないで…
ぼ~っとする頭はそんなことばかりを考えてる。
原田先生は私の頭を撫でてくれて、
「…いるから。寝ろ」
と、目のあたりを手で覆ってくれた。
気がついた時には、部屋の中には夢主(妹)がいて、おでこに貼った冷却シートを替えてくれていた。
「あ!お姉ちゃんおはよう。大丈夫?」
部屋を見渡す。
原田先生はいない。
夢だったのかな…
「原田先生が心配してたよ?」
どうやら、私が寝た後にすっかり放課後になってしまった学校へ戻った原田先生は、剣道部を訪れて、夢主(妹)に私の鍵を渡してくれたらしい。
「いきなり原田先生に呼ばれてびっくりしたよ。っていうか…」
やばい。
ドキドキする。
さっきはぼーっとしてたけど…私としたら…帰らないで、とか…散々言ってた記憶がある。
うわぁ恥ずかしい。
「お姉ちゃん真っ赤だけど…それ熱のせい?」
夢主(妹)は私を見て笑ってる。
「原田先生とお姉ちゃんて仲良しだね…どういうことかな~」
ニヤニヤとしながら聞いてくる夢主(妹)に、ただただ遡った記憶が恥ずかしいのと、収まりのつかないドキドキのせいでしばらく何も答えられなかった。
私は原田先生が好きなのかもしれない。
でも勘違いかもしれない。
わからないからとりあえず今日は全部を熱のせいにすることにした。