第2章 裏表チェンジャーⅡ
「自分で言うのも何ですがねィ、俺と山崎は一心同体
屯所の中でもそりゃもう仲が良いんでさァ。」
突然、沖田は有りもしない事を語りだす。
それはさも事実の様に淡々とした口ぶりで
しかも得意気なポーカーフェイスときた。
まぁ山崎からしたら質悪い冗談だとすぐ分かるのだが
純粋な真衣はそれが例え嘘であっても
言われたことを素直に受け入れてしまう。
「ぃ、いや沖田隊長。何言っ...」
「そうなんですか?わぁ、素敵ですね。」
この様に彼女は人を疑う事を知らない。
真衣も沖田の友情話と言う名の嘘に夢中で
山崎の言葉なんて聞こえていないらしい。
「ぇ...ちょっ...」
「そうなんでさァ、前は非番合わせて遊んだり
巡回もよく一緒に行ってたっけなァ。」
「ぇ、前はって事は今は違うんですか?」
「今ァ山崎が忙しくて、真衣が入隊してからは
顔は合わせてもこうして喋る様な時間なかったんでさァ」
おいいぃぃぃィッ!!!
誰の話してんだァアァァァ!!
前も今も非番合わせた事も休日に遊んだ事も無ぇよ!
アンタの言う山崎って誰だ!
俺か!?俺の事言ってんのかァァァ!!?
山崎の心中の叫びも空しく二人の会話は続き
沖田の話はどんどんエスカレートしていく
「真衣と山崎はいつも一緒で羨ましいですねィ」
「ぁ、私のせいで沖田さんと退君の時間なくしちゃいましたね...」
真衣は沖田の言うことを間に受け
自分が入隊して山崎に世話係りをして貰ってるせいで
二人の交友関係を薄くしてしまったと自己嫌悪する。
勿論、そんな事実は毛頭無いのだが、
沖田の迫真の演技と、山崎の説明力の無さと
そして真衣の天性の無智が織成した事態だ。
だがまだ沖田の虚言はまだ終わらないのか
そもそも何の為にわざわざこんな嘘をついているのか
それは全て一つの目的に繋がっていた。