第1章 裏表チェンジャーⅠ
真衣の部屋から局長室までは
誰にも会わずにたどり着く事が出来た。
「局長いらっしゃいますか?書類届けに来ました。」
局長室の前で障子越しに真衣が訪ねると
部屋の中から近藤の声がした。
「おう、真衣か。入っていいぞ」
「失礼します。」
部屋に入ると真衣の隣にいた山崎に気付く。
「山崎も居たのか、ご苦労だな」
「いえ、真衣にこんな重い荷物
持たせる訳にはいかないんで」
山崎は嫌味たらしく笑いながらどさりと机の上に書類を置く、
続いて真衣から書類を受け取り今自分が置いた書類の上に乗せた
「いやぁ、俺ァこういう細かい仕事が苦手でなぁ」
頭の後ろに手を回しながら笑って済ませようとする近藤
「苦手で通るなら誰も仕事しませんよ。」
「ぇ!?なんかザキ冷たいっ!!
お父さん泣いちゃう!涙が出ちゃう!!」
「自分の仕事でしょ。それに、間に合わないなら
他にも頼める人はいたでしょう。」
「しかし、、トシも自分の仕事を抱えていたしなぁ...」
ごにょごにょと言い訳をし出した
近藤の目の前で山崎はじとーっと目を細めて一言申す
「真衣は雑用係じゃありません!俺の大事な後輩ですっ!!」
「す..すんません...」
山崎にここまで言われると流石に言い訳も出来なくなる。
近藤はしゅんとして肩の力を落としてしまった。
その様子を真衣はおずおずとしながら黙って見ていた。
山崎は近藤から詫びを聞くと障子を開けて廊下に出る
真衣も続いて失礼しましたと一礼して部屋を出た。
「ぁ、因みにお妙さんに対するストーカーの件で
万屋の旦那が苦情に来てましたよ。」
「ぇっ....ちょっ!!?......」
「じゃ、失礼しました。」
近藤がまだ何か喋っている様だったが
山崎は構わず障子を閉めた。
「ザキ......反抗期......?」
近藤が呟いた言葉は
部屋の中にしか響き渡らなかった。
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