NONFICTION【家庭教師ヒットマンREBORN!】
第12章 大切なもの
「気を取り直して、始めっぞ」
リボーンの声に、空気がぴんと張った
「始めっ!」
一番最初に動いたのはスクアーロと獄寺くん
何も無いだだっ広い空間では、偶然によって勝敗の分けられるような"運"はほぼない。実力のみで方が着く
私が雲雀くんと勝負した時のように、偶然の打開策はここでは期待できない
だからまずは
「いけ!瓜」
自分の匣兵器に赤い炎を流し込んだ。開口1番は獄寺くんだな、
(ネコ…?いや、徐々に大きくなってる)
蛇行しながら、私の方へ突進を進める匣兵器は、獄寺くんの炎を纏った猫。しかしこちらに近づくにつれてその姿は大きく雄々しくなる
どんな匣兵器であれ、速攻で決める
『カンビアーレ1° 黒双』
重心を落とし、爪先にかける。ブーツと地面に出来た隙間の空気だけを圧縮し、一気に放つ
「…っ!」
弾き出されたバネのように、黒い隊服が勢いに任せて靡いた
時は一瞬。ゼロコンマ何秒かの間で叶風の両手に構えられた漆黒の双剣がしなった
『乱舞 矢切刃』
「ガァッ!!」
鋭く空中を走る矢さえも両断する技
相手が速ければ速いほど、斬れ味は鮮やかになる
今回は浅めにしといたけど。
「瓜…!…………それがアンタの匣兵器か」
両手に握る双剣は、柄頭から銀の糸で繋がっている。自在に伸び縮みし、匤をギリギリのところで繋ぐ命綱とも言える。
つまりこの武器の弱点は、糸を切られてしまえば終わりということ
『そう、変幻自在で風の力もある。速さならこの中の誰にも負けないよ』
「………なら、それ以外でどうだ」
『?』
獄寺くんは瓜がやられても、まだ次の手があると言わんばかりに薄い笑みを浮かべた
ボウッ
すぐ間近で聞こえた、火を噴く音
刹那
「叶風!!」
『っは……ッ!!』
背中に走る激痛と、スクアーロの声だけが鮮明に焼き付いていた