NONFICTION【家庭教師ヒットマンREBORN!】
第12章 大切なもの
もくもくと湧く煙が段々と渦になって私を囲い始めた
『なっ、何これ…っ!』
煙の層が厚くて抜け出せない…っ、閉じ込められる!
「貴女の風でもどうにも出来ないの」
雲雀くんにそう言われるも、風が起こらない。こんなこと初めてだ。風が言うことを聞いてくれないなんて
そうこうしているうちに煙は私を完全に閉じ込めて、煙のドームが出来る。私を中心に半径1m弱煙が晴れているがその向こうはもう何も見えない、ただ真っ白なだけ
「こんな方法で呼び出されるようになるとは時代じゃな。まぁ、先代も荒い使い手じゃったが」
先程聞こえた妙にジジくさい喋り。どこからだろう。気配を探るも煙全体からするものだから特定できない
『あなた…誰』
すると前方から黒い影が見え始め、徐々に近づいてくる
不思議なことに影は形を変え、私の膝丈位のものや、私より大きいもの、小さいもの……何度か変わって、ようやく一つの形に収まる
それが、真っ黒な狐だった
『キツ、ネ…よね…?』
こんな不思議なことをやって退けるなんていったい何者だと構えたのに、出てきたのはただの狐
「ただの狐とは失礼な!」
『あなたが喋ってたの!?』
この世に喋る狐がいたとは……あれ、これって匣兵器だよな?じゃあ、もしかしてこの狐が……
「ぬしの持っていた鏡じゃ。あれは昔から風使いと共にある鏡。鏡の中にはワシのような付喪神みたいなのが付いとる。」
私の前に座り込んで勝手に説明し出す黒狐。鏡が狐で、狐が匣兵器で…ん??
「バカじゃのぉ」
『うっさい!学が無いだけよ!…たぶん』
「まぁ、座れ」
流されるままに私も座り込んで話を聞くことに。
『…それじゃあ、あなたは鏡に付いてた付喪神…ってこと?』
「そうじゃ。それをお前は…はぁ」
重苦しくため息をつかれる
『なっ、何よ』
「ワシを匣兵器にしおって!一応神じゃぞ!」
『大袈裟な!さっき自分で神“みたいな”ものだって言ってたじゃんか!』
「自分で神だと言ったらイタイやつみたいになるじゃろうが!」
『狐が喋ってる時点でイタイ通り越してるわ!!』
互いの肩が揺れる
乱れた息が一時休戦の合図となった。