第1章 前編
ユメとハルカは心配そうにトランクスと悟天を見つめる。
「何のために海に来たのさ! 皆で遊ばなきゃ意味ないよ!」
するとトランクスは言いにくそうに口を開いた。
「その……実は昨日ほとんど寝てなくて、ちょっと休みたいんだ」
(え……)
言われてみれば顔色が少し悪いように思えた。
……チクリと胸が痛む。
「はぁ? 何それ……」
それでも不服そうな悟天。そこへ、
「ほら悟天。トランクスさんがそう言ってるんだから休ませてあげよ。ね!」
ハルカが気を使うように悟天の背中を叩いた。
悟天はまだ納得いかないというふうに頬を膨らませていたが。
「わかったよ。じゃあ僕たちだけで行ってきちゃうからね!」
そう言ってハルカの手を取り海の方へ足を向けた。
「ユメちゃんも行こう!」
「え? あ……」
ユメは迷う。
ここにトランクスと残っていたいという気持ちもあるけれど……。
「ユメちゃんも行って。オレのことは気にしないでいいから」
そう笑顔で言われてしまい、小さく頷きユメは先行く二人を追いかけた。
「トランクスさん大丈夫かな。社長だもんね~。やっぱお仕事大変なんだろうなぁ」
海にプカプカと浮かぶ大きなビーチマット。その上に仰向けで寝そべってハルカが言う。
真上から降り注ぐ陽の光が眩しくて、手のひらで日よけをつくる。
その隣でユメはうつ伏せで寝そべっていた。
悟天はそんな2人が乗るビーチマットを誘導しながら、まだ口を尖らせている。
それを横目で見てふぅと溜息をもらすハルカ。
「ねぇ悟天、まだ怒ってんの? しょうがないよ。無理させちゃ悪いでしょ」
「……私の、せいだよね」
「え?」
ユメの小さな呟きに、ハルカがそちらを振り向く。
「私が海に行きたいなんて言ったから、忙しいのに無理してくれたんだ、きっと」
「そんなことないよ!」
強く否定してくれるハルカ。
でもユメは「海に行きたい」なんて言ったことを後悔していた。