第1章 前編
「うっわあ~! ハルカかっわいい~!!」
「こ、こら! こんなとこで抱きつくな!!」
いきなり抱きついてきた恋人を思いっきり引き剥がそうとするハルカ。
ユメはというと、自分のことなど忘れてトランクスの水着姿に目を奪われていた。
(トランクスさんって着痩せするんだー!)
パーカーを羽織ってはいるが、そこから覗く鍛え上げられた身体に驚く。
「可愛いよ」
「へ?」
急に掛けられた思いがけない言葉に、ユメは視線を上げる。
笑顔のトランクスと目が合った。
「すごく似合ってるよ。ユメちゃん」
ボッと、一気に顔の熱が上昇った。
「あ、ありがとうございます!」
真っ赤になってお礼を言うと、トランクスは嬉しそうに笑った。
(うわあぁぁん! 嬉し過ぎる~~!!)
「うん! ユメちゃんも可愛い! ふたりとも僕らから離れちゃダメだよ。絶対ナンパされちゃうから。海には怖い狼がいっぱいいるからね~」
「お前が一番危ない」
「うわっヒド!」
トランクスの突っ込みに大げさにショックを受けたフリをする悟天に、皆で笑ってしまった。
――しかし。
「オレ、ここで荷物を見てるから」
「え?」
場所取りをして荷物を置いて、いよいよ海に入ろうとした時だった。
トランクスがその場を動かず言ったセリフに、3人は揃って振り向いた。
「なんで!? トランクス君も海入ろうよ」
悟天が信じられないといった顔で言う。
「オレはいいよ。こんなに人がいるんだ。誰かが荷物見てた方がいいだろ」
「いいよ荷物なんて。貴重品はロッカーに入れたんだし」
だがトランクスはその場を動こうとしない。
(トランクスさん……?)