第1章 前編
(トランクスさんは優しいから、もしかしたら今日も本当は嫌々来てくれたのかも……)
一人ひたすらブルーになっていくユメ。と、
「僕、トランクス君連れてくる」
『え?』
今までムスっと黙っていた悟天のはっきりとした声音に、二人は顔を見合わせた。
「ちょっと悟天、やめなよ! ほら、まだ寝てるじゃない!」
トランクスは徐々に近づいてくるハルカの慌てた声にゆっくりと目を開く。
起き上がると、すぐ目の前に幼馴染の姿があった。
「悟天、早かったな。悪いけど、オレもう少し横になっていた」
「トランクス君。みんなで海入ろう」
言うや否や悟天はトランクスの腕をムンズと掴み上げた。
「ぅわっ! お、おい、悟天!」
悟天は問答無用でトランクスを立ち上がらせると、そのまま海の方へと引っ張っていく。
「悟天、やめなよ!」
恋人の制止にも耳を貸さない悟天。
その無理やりな強い力に流石のトランクスもズルズルと砂浜に跡を残しながら引きずられていく。
何事かと他の人たちもチラチラとこちらを見始めている。
ユメはハラハラしながらそんな2人を見守る事しかできない。
「やめろ悟天!」
海が近づくにつれ、なぜか必死な形相で抵抗し始めるトランクス。
「何が『休みたい』だよ! トランクス君、そんなに、ヤワじゃないで、しょっ!」
「離せ~~っ!」
「い~や~だっ! ……それに、」
もうすぐそこに波が打ち寄せている所で、真っ赤な顔で引っ張り合いをするふたり。
「ユメちゃんが可哀想だよ!」
「え?」
(……え?)
急に出てきた自分の名前に驚くユメ。
トランクスと目が合った。
……その一瞬だった。
一瞬抵抗を緩めてしまったトランクスは、悟天のすさまじい力によって、弧を描いて海へと飛んでいった。