第1章 前編
「大丈夫。悟天が言ってけど、トランクスさん、ユメのこと気に入ってるって」
「ハルカ~そんな変に期待しちゃうようなこと言わないで~」
にっこりと笑う親友とは反対に、一層情けない顔になるユメ。
「なんで? 期待してもいいと思うけどな。だって私から見てもそう思ったし」
「だってあのトランクスさんがだよ!? 私なんかを好きになってくれるわけないよ!」
確かに会うたび……彼の笑顔を見るたびに、少しは期待してしまう。もしかしたら……と。
でも彼は遠い存在。こうやって会えるのだけでも奇跡に近い事なのだ。
(期待なんか、しちゃダメ)
何度自分に言い聞かせただろう。
……だからせめて……。
その時、車の軽いクラクションが聞こえた。
「あ。来たみたい」
だからせめて、彼と居られる瞬間を思いっきり楽しみたいって思うんだ。
一台の車が二人の前に止まった。
「お待たせー!!」
明るい声で助手席の窓から顔を覗かせたのは、ハルカの彼氏である悟天。
そして……。
「ユメちゃん久しぶり。元気だった?」
ハンドル片手に笑顔を向けてくれたのは、青い瞳の彼。
一ヶ月ぶりに聞くその優しい声に胸が大きく高鳴る。
(トランクスさん、やっぱりカッコイイ~~!)
顔が赤くなるのを必死で抑えながら、ユメは口を開ける。
「は、はい! あの、今日はありがとうございます! 折角のお休みなのに……」
「いーのいーの! トランクス君は休みの日くらいこーやって外出て遊ばないと、身体衰えちゃうからさ」
「その言い方はやめろ悟天。でもホント、最近あんまり出掛けてなかったからさ、こっちこそ誘ってくれてありがとう」
そう言って笑ってくれるトランクスに、ユメは心底ホっとした。
そして二人は車に乗り込み、総勢4人は近くの海に向けて出発したのだった。