第1章 前編
ユメは海が好きだ。
そして好きな人と一緒に海に行く事が、昔からの小さな夢だった。
ユメの現在好きな人はその夢を叶えるのにぴったりの人物。
初めて会ったときから海が似合う人だと思っていた。
彼とは親友の彼氏の紹介でまだ数回会っただけだけれど……。
ユメはすぐに彼の魅力に捕まった。……恋に落ちた。
彼の名前はトランクス。なんとあのカプセルコーポレーションの若社長。
と言ってもその肩書きに惹かれたわけでは断じてない。
優しくて、かっこよくて、知的で、運動神経抜群!!
ちょっと天然なところもあるけれど、それも彼の魅力の一つだった。
そして何より笑顔が素敵だった。
……彼はあの大会社の社長で、到底叶う恋じゃないと解っている。
でも彼と海に行きたいと思った。
叶う恋ではないけれど、この小さな夢を叶える相手は、彼がいいと思った。
親友のハルカが作ってくれたこの出会いに、何度感謝しても足りなかった。
ダメ元で、勇気を振り絞って彼の友達である悟天に聞いてもらうように言ってみたけれど……。
「まさか本当にOKくれるとは思っていなかったってわけ?」
「そーなの~! うわぁ~んどーしようハルカ~! ヤバイくらいに緊張してるよ~~!」
待ちに待った約束の日。
初夏、晴天で蒸し暑いくらいの今日は、絶好の海水浴日和。
ユメ達二人は今、海へと続く道路で迎えに来てくれる車を待っていた。
……昨日の夜は大変だった。
今日のために買った水着を部屋の中で着て、おかしなところは無いかと鏡の前で何度もチェック。
ちょっとでも失敗したくなかったから、忘れ物がないようにしっかりと準備。
興奮して全然眠くなかったけれど、クマを作りたくなかったから無理やりに眠った。
あと一番大変だったのが“心の準備”。
結局、それは今になっても出来ていない。
何せほぼ一ヶ月ぶりに会えるのだ。
緊張するなと言う方が無理な話だ。