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【DBGTトラ】海と彼

第2章 後編



「ヘタレのくせにかっこつけてんじゃねーよ!!」


 その間にひとりの男の拳が迫る。

 悲鳴をあげるヒマもなかった。……だが、


「オレは、好きな子が大変なのに黙って見ていられるほど、ヘタレじゃない!」


(え……?)


 ユメは彼の背中を見ながら目を丸くする。

 次の瞬間、ギャル男は宙を舞っていた。

 大きな水しぶきを上げて海に落ちる男。

 その後も続けて同じことが起こった。

 次々と海面に叩きつけられていく男たち。


「かっこいい……」


 そう小さく呟いたのは男たちの仲間であるはずのギャルだ。


「っていうか、海ダメなんじゃなかったの!?」


 青い顔で叫ぶギャルもいる。

 彼の動きは水の中ということを感じさせないほどに鮮やかだったから。

 しかしユメは先ほどのセリフが頭から離れなくて呆然としていた。


(好きな子って……?)


 そして、あっという間に決着はついてしまった。

 無事なギャル男はひとりも残っていなかった。

 ギャルたちがその男たちに慌てて近寄っていく。


「行こうか、ユメちゃん」


 その声にはっと我に返ると、全く無傷のトランクスが目の前にいた。


「――だ、大丈夫ですか!? だって、海!」

「ハハ……」


 弱々しく笑ったトランクスは、


「実はそろそろ限界だったりして……」


と、今にも倒れそうな青い顔で言ったのだった。





 慌てて海から上がった二人は、そのまま自分たちの荷物が置かれた場所まで戻った。

 ユメはタオルを肩に掛け先に腰を下ろしていたトランクスに訊く。


「何か飲物とか買ってきましょうか?」

「ううん、ありがとう。もう大丈夫」


 そう言って、少し顔色の良くなった彼は笑顔を見せてくれた。

 おずおずと隣に腰を下ろすユメ。すると横で盛大な溜息。


「あーぁ。ホント格好悪い、オレ」

「そんなこと……! あの、助けてくれてありがとうございました!」

「いや、こちらこそありがとう」

「え?」

「さっきのユメちゃんのセリフ、すごく嬉しかった」


 にこにこ顔のトランクスにユメは首を傾げる。

 そしてすぐに自分が大声で言ったセリフを思い出した。


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