第2章 後編
人と人との合間を縫ってスイスイと泳いでいくユメ。
海の中にいると外の音がほとんど遮断されて、まるで別の世界にいるように感じる。
今はなんだかずっとこの静かな海の中にいたい気分だった。
ハルカと悟天は誰が見てもお似合いのカップルだ。
それが今のユメにはとても羨ましかった。
(私は……もうダメかな)
海に潜っていなかったら涙が零れていたかもしれない。
この後トランクスにどんな顔をすればいいかわからなかった。
朝のように話せる自信が、なかった……。
そのときだ。
――とんっ
(!)
腕が何かにぶつかってしまった。
それが人だとわかり焦る。
いつの間にか人の輪の中に入り込んでいたらしい。
「ご、ごめんなさい!」
慌てて海面から顔を出して謝る。
そこには6人ほどの男女がいた。
しかもよりによってユメが苦手な今時の、所謂ギャル・ギャル男達。
砂浜から結構離れてきてしまったせいか、周りには他にほとんど人がいない。
ユメは内心ビクビクしながら早くこの場を離れたいと思った。
だが彼らは急に突っ込んできたユメに興味深々のようで。
「何、アンタ一人?」
「お、かっわいい~」
「あれ? この子って、さっきのヘタレ男と一緒にいた子じゃない?」
一人の女がユメの顔を覗き込んで言う。
「あ~、あの情けない声上げてた? アレが彼氏なの?」
「あれはマジ笑えたよな~!」
ゲラゲラと笑いだした彼らにカチンと来たが、出来るだけ関わり合いになりたくない。
「本当にすいませんでした」
さっきよりも低い声でもう一度頭を下げ、嫌な気分で彼らに背を向けたときだった。
「恥ずかしい彼氏持つと大変ね。がんばってネ~!」
そしてドッと上がる笑い声。
一気に、頭に血が上った。
「彼は恥ずかしくなんかないです!」
気付いたら振り向き叫んでしまっていた。
だがすぐに後悔する。……彼らの目つきが変わった。
「はぁ? 何言い返してんの?」
「あっれ~? 彼氏侮辱されて怒っちゃったぁ?」
「うっわ、彼氏想い~」
すぐにこの場を離れた方がいい。そう頭ではわかっているのに、身体が動かない。