第2章 後編
「私が海に誘ったりしたから……」
「ユメちゃんは何も悪くない」
その優しい声にゆっくり顔を上げると、トランクスがまだ赤みの引かない顔で微笑んでいた。
でもその笑顔はやはり何処かぎこちなくて、また少し胸が痛んだ。
「こっちこそごめん。折角誘ってもらったのに台無しにしちゃって」
そして笑顔のまま、一人にして欲しいと続けた。
「もう、悟天がムキになったりするから!」
トランクスを残し海に戻ってきた3人。
「だってさ~」
「だってじゃない!」
ハルカに言われシュンとする悟天。
その姿はまるで、ご主人様に叱られて耳を垂らす犬のようでユメはこっそりと苦笑する。
「ユメもそんな顔しないでさ、楽しもうよ。きっとトランクスさんもあまり気を使って欲しくないと思うよ」
「うん……」
一応笑顔で頷いてみたが、どうにも気は晴れそうになかった。
「よし。こうなったら、トランクス君に海を好きになってもらおう作戦だ!」
「何それ?」
恋人の提案に半眼を返すハルカ。
「海の良いところを皆で教えてあげてさ、海を好きになってもらうんだよ」
「例えば?」
「水着ギャルがっぱいだよ! とか、美味しそうな魚がいっぱいだよ! とか!」
満面の笑みで得意げに言う悟天の前で、同じく満面の笑みのハルカ。
「へぇ~、悟天は海のそんなとこが好きなんだ~?」
「あれ? ハルカ、目が笑ってないよ?」
直後、悟天は恋人の容赦ない鉄拳を食らう羽目になる。
そんな二人を見ながらユメは小さく笑った。
そしてハタと気付く。
「私、ちょっと一人で泳いでくるね!」
「え?」
「ユメぢゃん?」
驚く二人に笑顔で手を振って、ユメはその場を一人離れた。
……二人の邪魔は、したくなかった。