第2章 後編
「ごめん!」
相変わらず眩しい日差しが降り注ぐ中、勢いよく頭を下げる悟天。
「……」
その足元では、タオルを無造作に頭に乗せたままトランクスが膝を曲げうずくまっていた。
表情は俯いてしまっていてわからなかったが、耳が真っ赤なのが日焼けのせいだけでないことは明らかだった。
「知らなかったんだ、僕。まさかトランクス君、海が苦手だったなんて……」
「……」
トランクスは答えない。
そんな二人をユメとハルカは気まずそうに見つめていた。
……ショックだった。
海が似合うと思っていた彼が、海が苦手だったという事実。
そしてその苦手な海に誘ってしまったのは自分だ。
申し訳ない気持でいっぱいで、謝りたいのに言葉がなかなか出てきてくれなかった。
さっきまで集まっていたギャラリーはすでに散り、海辺はまた普段通りの賑わいを見せている。
きっとあんな姿を大勢の人に見られてしまったトランクスの方が、ずっとショックだったに違いない。
青空の下、4人の居るこの場所だけがどんよりと暗い雰囲気に包まれていた。
「でもさ、昔よく一緒にプール行ったよね?」
「……プールはいいんだ。苦手なのは海」
トランクスが漸く少し顔を上げて口を開いた。
その顔はやはり真っ赤に染まっていた。
「なんで海だけ?」
「……昔、まだオレが小さかったころに家族で海に行ったんだ」
「家族って、ベジータさんも?」
頷くトランクスに酷く驚いた様子の悟天。
なんで驚くのかは、ユメにはわからなかったが……。
「オレ、その時が初めての海水浴だったのに……さっきみたいに父さんに放り投げられて、溺れかけた」
ユメとハルカは心底驚く。そんな酷い親がいるだろうか。
だが、
「うっわぁ~、ベジータさんならやりそ~」
哀れむように言った悟天は明らかに納得している様子で、更に驚いた。
「それから、海がダメになった……」
そう言ってトランクスはまた自分の膝に突っ伏した。
「あちゃ~。それならそう言ってくれれば良かったのに……」
「……」
「ごめんなさい!」
ユメは思い切って頭を下げた。