【おそ松さん宗教松】セーチクダイ・スロラーニュ 《後編》
第5章 それぞれの想いが、交差する。
【トド松】
窓辺に半月が灯っている。
でも、よく見たら半月は反っていて、月が新月へ欠けてゆく。
新月になった頃、カラ松神父はいなくなる。
そしたら、僕の仕事は終わり。人間界から消えて、魔界で人の命を狩る日々。
まるで、少し前までこの部屋を使っていた人のように。
この部屋には、今日干したばかりのふかふかの布団と、大きな本棚。そして机と椅子。
ベッドの隣に本棚があるから、いつもここで読んでいたのか。
僕はベッドにまたがり、適当な本を探した。ペラペラとページをめくっても、難しい文字に訳のわからない物語。
フィクションは、全て他人の妄想を綴っただけの話なのに、何が面白いんだか。
「……あれ?」
一つだけ妙に分厚い本を見つけた。物語が書いてあるってサイズじゃない分厚い本。
もしかしたらと思って、手に取った。それは、彼のアルバムだった。
案の定、中には沢山の写真と、小さく文字が記されていた。
『一松とカラ松』
二人が子供の時だろうか。二人とも、大人に肩を抱かれながら笑ってる。
『一松、友達と遊んでいる時』
今度はカラ松神父じゃない子供が出てきた。一松が友達に本を貸している姿。
一松は笑っているけど、その本を貸したくないような表情。
でも、誰かに自分の好きな物を知って欲しかった。僕には、そう感じる。