【おそ松さん宗教松】セーチクダイ・スロラーニュ 《後編》
第2章 独りの神父が、護りたいもの
そして一松に十字架を渡した数週間後。
一松は徐々に明るくなっていった。
真面目で、笑顔で、心優しい青年。
教会の理想とする人間になった。
悪魔を信用してよかったと、思わず顔が綻んだ。
ただ、これは神からの罰なのか、悪魔の裏切りなのか。
一松は悪魔を信頼しすぎた。
悪魔だけしか味方がいないと思ってしまった。
それを理解したのは、あの参拝者が一松とすれ違い、俺に紅茶を淹れてくるといったあの時。
一松の不眠がとれたような綺麗な目。毎晩、あいつに会う為に早く寝ているもんな。
だから俺は悪魔に嫉妬した。所詮、お前は悪魔のクセに。
だからあの時俺は一松を抱き締めたフリをした。
抱き締めたフリをして、一松の十字架を握り、
────俺が割ったんだ、一松の十字架を。