【おそ松さん宗教松】セーチクダイ・スロラーニュ 《後編》
第8章 ただの必然、ただの運命
【一松】
神父は僕に割れた十字架を掛けた。壊れているので、意味は無いが。
「この十字架は…一松がまともな修道士になれるように祈った十字架だ。悪魔にとっては、記憶を滅ぼす忌みな十字架だがな。」
神父が割り、僕が引き千切った十字架。もうぼろぼろで、教会からしたら縁起でもない。
そんな十字架を、神父はずっと大事に持っていた。
「一松は入った当初は、勉強は不真面目だったが芯がある奴で、おとなしい奴だったぞ。」
どしっとくる過去。相変わらずこの神父は空気が読めない。
「…すぃません……」
意味もなく呟いた。
「だけどしばらくしたら、不良になったなぁ。猫と遊ぶか寝るかで、何にもやる気を無くしたんだ。」
神様に仕える事を心から否定しているのか、自分は。(今の)自分も同じ事言えないけど。
「…ダメなとこばっかですね、今も昔も。」
「いや、そんなことはない。昔は心優しくて、孤児の子供のお世話もしていたし、動物愛護な奴だった。今も、昔よりずっと敬語が上手になってる。昔は棒読みな丁寧語だけだったのに。」
「………」
でも、他のシスターと比べれば、全く以て自分は劣る。
こんな自分をなぜ教会から追い出さないのか。こんな自分をなぜこの兄(神父)は愛してくれるのか。