【おそ松さん宗教松】セーチクダイ・スロラーニュ 《後編》
第8章 ただの必然、ただの運命
【カラ松】
「別に僕を好きでいてなんて頼んでない。」
血を止血する為に使ったベールはビリビリに裂かれて、一松のボサボサの毛が姿を見せていた。
「わざわざ僕の為に悪魔と契約して、十字架作ってまで工作して、そして命捨てるなんて……そんなの頼んでない、僕が神父にそこまでしてもらう道理なんてないっ…」
自分の弟は、自分のせいで自分の記憶を失くしている。
それはあまりにも理不尽で可哀想な一松の“かぞく”の記憶。
自分がどうして教会にいるのか、悪魔と関わったきっかけも、何も思い出せない。
なぜ俺がこんなにも一松に執着しているのかが分からないのだ。
…だったら自分が伝えたらどうなんだ?
自分が、「お前は俺の弟だ」と伝えたらどうなんだ?
一松が悩む理由も解決するんじゃないのか?
なんでこんな簡単なこと、すぐに思い付かなかったんだろうか。二人になるチャンスなんて、いくらでもあったろうに。
「道理はあるさ、一松。」
「お前は俺の弟だから」
その言葉を後悔する事になったのは
一秒にも満たないくらいすぐの出来事だった。