【おそ松さん宗教松】セーチクダイ・スロラーニュ 《後編》
第8章 ただの必然、ただの運命
【トド松】
「おそ松兄さん…悪魔じゃ…ないの?」
「トド松がそう思うなら、そうだよ。」
そういうとおそ松兄さんは自分の羽をベリベリと背中から剥がした。重かったなと、肩を揉む。
床に落とされたおそ松兄さんの羽には、血も骨も通ってなかった。
飛ばない羽。
風がないと揺れない尻尾。
人間に対する異常な執着。
一般人には見えない姿。
兄弟の存在を忘れない態度。
「堕…天使…」
兄さんは尻尾をぶちっと契り、頭に付けた角を投げた。ゴロンと、鈍い音がする。
「な?『殺さねぇし“殺せねぇよ”』」
おそ松兄さんは、チョロ松兄さんの方を向いて笑った。
「兄さん…なんでわざわざ悪魔の真似後を」
「俺を殺していいよ。死人を殺すってあれだけどさ。」
「なんで悪魔のフリなんかしたの!?」
緑の悪魔の声は、硝子の外まで。
「…償い、だよ。自分が正しいなんて、信じたくないもん。形だけでも、さ」
悪魔になって、悪いことたくさんして、罪悪感で、自分を苦しめるのが償いだとでも言うの?
そんなのただの…
「…自分勝手な現実逃避じゃないか。」
「トド松………」
右手に持った鎌に汗が滲む。
悪魔だと思ったヒトが堕天使で、神と天使が悪魔になって、堕天使ふたり、悪魔もふたり。
向こうの外には、人間二人。