第6章 引き抜き
「亜城西病院って、亜城大学付属西部病院でしたっけ?」
「そうだ。
そこの救命救急センターに勤めることになる。
…ここからだと少し遠いな」
「そうですね」
それになんの問題が?
「霜月は本当に他人のことには無頓着だよな。
今も分からない、って顔しているし」
「神那ちゃんらしいや。
僕ね、こう見えても既婚者なの」
「うん」
「だから単身赴任になっちゃう訳」
「うん」
「最近も忙しくてなかなか話せてないし、家にも帰れてないし」
「うん」
「奥さんとも上手くいってなくてね」
「うん」
「仕事優先だから嫌気がさして…興味ないでしょ?」
「うん」
「あらら、きっぱり言われちゃったや」
「結婚してることにとやかく言う訳じゃないけど、周りの意見って必要なの?
大事なのは周りにどう迷惑かけるかよりも、自分がどうしたいのかじゃないの?
神崎はなんでその奥さんに遠慮してるの?」
「遠慮…か」