第6章 引き抜き
「神崎は奥さんに引け目でも感じてる訳?」
「っ…参ったな〜。
神那ちゃん、そんな鋭かったかな?」
「神崎が分かりやすいの。
家庭を任せきりだとか、構ってあげられないとか、そんなこと気にしてるの?
それとも奥さんの気持ちが自分から離れてるのに気づいているか…あるいはその逆、神崎の気持ちが奥さんから…」
「霜月!
もうその辺で良いだろう」
「…まぁ」
あるいは神崎の気持ちが奥さんから離れているか。
「はは、やっぱり神那ちゃんは凄いや。
僕誰にも気づかれない自信あったんだけどなぁ。
全部当てられちゃった」
参ったよ、という風に手を挙げた。
「そうだよ、その通り。
奥さんには他に好きな人が出来たけど、僕が居るから不倫する訳にはいかない。
僕も僕で、奥さん以外に気になる人が出来ちゃったって訳」
「…そう」