第3章 3
エレベーターに乗った瞬間、胸が高鳴って、一気に湧き起こる高揚感に指先まで電流が走ったような心地がした。
痺れる、心地よい、沁みるような感覚。
脈打つ心臓は早鐘の様に鳴って、呼吸が苦しかった。
こんなになってしまうのか。
自分でも驚きながら、それを制御できない。
あくまで普通に、何でもない風に、しなくては。
震える身体を叱咤して、すっと、彼の横に立つ。
綺麗に、自然に、緊張を悟らせては、駄目。
彼の横、正確には斜め後ろら辺に身体を滑り込ませる。
それなりの広さのあるエレベーターなので、身体がぶつかることはない。
すれ違い様にさりげなく会釈して、私はあらかじめ決めていた位置に無事、到着した。
すれ違う瞬間、彼の方を見ることは出来なかった。
が、彼の匂いがした。
香水、ではないかも、けれど何か良い匂い。
私は大丈夫かな、まあとりあえずは平気だろう。
そんな事を考えながら、斜め前の彼をそっと窺う。
相変わらず綺麗なうなじだ。
私は、息をするのにも音がしそうで、手のひらをぎゅっと握りしめていた。