第4章 4【MOMIKEN SIDE】
「とにかくちゃんとちゃんにメール送んないと、心配してるでしょ、絶対」
「勝手にちゃんって呼ぶな」
「もう不安になってMOMIKENのとこキライになってるかもよ」
「なってねー」
メールを送り直しながら、キライになってるのかな、なんて思ってしまう自分が女々しい。
宛先を確認して、今度は確実に彼女へ送信した。
『さん
昨日はごめん
早く会いたい』
色々言いたいことはあったし、もっとちゃんと謝りたいこともあったけれども、率直な気持ちだけを送ることにした。
彼女はまた会ってくれるだろうか。
俺はさんのことばかり、考えている。
楽器に触れると無心になって、指がすらすら動いた。
切り替えてしまって彼女への想いが薄れる気がして、少し不安だったが、いざベースを握ってしまえば音楽に集中していた。
没頭するように、音だけを聴いて、リズムを感じて。
弾き終えるとやたらすっきりして、なんだか分からないけれど、きっと大丈夫、そんな気がしていた。
昼食後にメールを見ると、彼女からの返信が入っていた。
『MOMIKENさん
23時、いつものエレベーターで会えたら嬉しいです
』
この短い文面が、どこか二人だけの秘密の暗号のようで。
じんわり胸があたたかい。
俺はぼんやり画面を見つめながら、自然と口許が緩むのを感じていた。
end