第3章 3
「さん…」
あの、と、彼の手が肩に触れる。
ああ、熱い手のひら。
「さん、いきなりこういうこと、本当は良くないと思うし、失礼だし、軽く思われるかもしれないんだけど、」
「今だけ、ごめん」そう言って、ぐっと引き寄せられて、抱きしめられる。
想像よりも逞しい腕の中で、私は、泣きそうになっていた。夢よりもずっとリアルな感触。大きな腕に包まれると温かくて、彼の匂いでいっぱいで、少し余裕なさそうな彼の声が切なかった。
「ごめん、さん、なんか、抑えられなくて」
熱い吐息が近付き、唇が触れ合う。
触れる、というか押し付けられるような勢いで、私は少し仰け反った。
「、さん、好きだ…」
唇が触れ合ったまま、言う。
そのまま舌が溶け合った。
彼の手に導かれて私の手のひらを彼の心臓付近に当てられる。
「ちょっと聴いてみてよ、俺の心臓の音」
「あ…………」
バクバク、すごく鳴っている。
「俺、めちゃくちゃ緊張してる………」
さん、全然フツーそうで、俺だけこんなだよ、情けねえーと、笑う。
「MOMIKENさんより私のが、すごいですよ…」
「えー、嘘、確かめようかな」
「…!」
「嘘、いまのナシ、今のセクハラだから」
「やっぱナンパじゃないですか」
「ああっ、もう、嘘!嘘!だから許して、いや、許せ!!」
「あははっ」
素っぽい彼の仕草や言葉遣いが可愛くて、思わず笑みが溢れる。
ああ、あのテレビでみた笑顔、そのままなのだと思った。