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23時、エレベーターにて

第3章 3


あー言っちまった、と、彼は、顔を片手で覆う。
恥ずかしい、と独り言のように呟きながら。

「何でかな…、そりゃ、見た目は勿論すごくタイプだったんだけど、こうして一緒にいて、なんか、何にも分かんないまんまなのに、どんどん好きになってって、だから俺、」

言い訳のように何か言っている彼は、手で顔を押さえながら俯く。

「MOMIKENさん、あの、」

私は心臓が破裂しそうなほどバクバクとする胸を押さえていた。
好きな人が、自分を好きだと言っているのが、こんなに嬉しい気持ちだったのかと、心のなかが嬉しい気持ちで溢れておかしくなりそうだった。

MOMIKENさんが好き。

大好き。

彼の事、何にも知らないのに、彼のすべてが好きで、たまらない。

例えばすぐに終わりがきても、それはそれできっと大丈夫なのだ。
死ぬ訳じゃない。
私は、始まる前からこわがっていたのだ。

傷つきたくなくて。

スマートフォンを持った手を掴んでいる彼の手をそっと外す。

彼は顔を覆っていた手をどけて、こちらを見ている。

「私、MOMIKENさんのこと、すごく、好きなんです、ファン、です…、でも、MOMIKENさんのもっと違うとこも、知りたい、です、私、MOMIKENさんの手が、好き、今日、触れて、知りました、そこが、好き」

自分自身、何を言っているのかあまりよく分かっていない、けれども伝わるだろうか、彼に。

だいたい、本当に、お互い、何も知らない二人なのだ。
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