第3章 3
あー言っちまった、と、彼は、顔を片手で覆う。
恥ずかしい、と独り言のように呟きながら。
「何でかな…、そりゃ、見た目は勿論すごくタイプだったんだけど、こうして一緒にいて、なんか、何にも分かんないまんまなのに、どんどん好きになってって、だから俺、」
言い訳のように何か言っている彼は、手で顔を押さえながら俯く。
「MOMIKENさん、あの、」
私は心臓が破裂しそうなほどバクバクとする胸を押さえていた。
好きな人が、自分を好きだと言っているのが、こんなに嬉しい気持ちだったのかと、心のなかが嬉しい気持ちで溢れておかしくなりそうだった。
MOMIKENさんが好き。
大好き。
彼の事、何にも知らないのに、彼のすべてが好きで、たまらない。
例えばすぐに終わりがきても、それはそれできっと大丈夫なのだ。
死ぬ訳じゃない。
私は、始まる前からこわがっていたのだ。
傷つきたくなくて。
スマートフォンを持った手を掴んでいる彼の手をそっと外す。
彼は顔を覆っていた手をどけて、こちらを見ている。
「私、MOMIKENさんのこと、すごく、好きなんです、ファン、です…、でも、MOMIKENさんのもっと違うとこも、知りたい、です、私、MOMIKENさんの手が、好き、今日、触れて、知りました、そこが、好き」
自分自身、何を言っているのかあまりよく分かっていない、けれども伝わるだろうか、彼に。
だいたい、本当に、お互い、何も知らない二人なのだ。