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【イケメン戦国】*ヒメゴト* 戦国時代に舞い降りた現代の姫

第3章 どうやら夢じゃないらしい。


その声色で、由里は理解してしまった。
警戒をしたせいか、由里は自然と立ち上がってしまった。

「歩いてた、だけよ」

リン…
リン…

木霊する鈴の音がうるさい。
鈴の音の正体は、その人が持っていた、長さの長い棒だった――そう、よく、お坊さんが持っているような。
しかし、その高音で、催眠術でもかけられている気になってしまう。

「そうか……私は顕如と申す旅の僧だ。困ったことがあるなら相談に乗ろう」
「いいえ、結構です」
「そうか……つれないな」

ドクリ
まだ、心臓の高まりは収まらない。
当たり前だ、由里はとっくにわかってしまったのだから。

その大きな背格好。
その闇に紛れやすい着物の色。
その低い声。

(この人が……)

「……その腕、切り傷があるようだが、手当をさせてくれまいか」
「結構です、私、村へ帰らなければ」

「村?」
「ええ」

由里の言葉を聞いた後、その人が闇の中、含み笑いをしたのがわかった。
きっと、由里の嘘がすぐにわかったのだろう。

無論、このあたりは林で少し先に本能寺があるだけで、村などない。
ましてや由里はどこかの村から来たのではない、日本という、未来の国から来たのだから。
そして彼は、由里が自分の正体をわかっていることもお見通しだった。

「これをもっていきなさい」
カラン、と。
落ちてきたのは刀だった。

「これは」
「護身用だ。夜の森は鬼がうろついているからな……」

リン…
リン…

「っ」

ゾワリ。
由里に、最初の寒気がするような感覚が、また襲ってきた。
暗闇で見えないが、その笑みはきっと何かを射殺すような、不敵な笑みなのだろう。

彼は由里の前にでて、肩だけたたく。
何をされるかと委縮してしまったが、拍子抜けした。

リン…
リン…

リン…
リン…

そして、由里の元から遠ざかっていく。
残り香みたいに、耳をつんざくその高音が残ったままだった。
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