【イケメン戦国】*ヒメゴト* 戦国時代に舞い降りた現代の姫
第3章 どうやら夢じゃないらしい。
「まっ……迷ったー!!!」
それから、気が抜けたのか何なのか、由里はすっかり迷ってしまった。
当たり前だ。人気も光もない、夜の森の中である。
もっとも現代であれば、街灯で道が照らされ、道路は歩きやすく整備され、何も問題ないはずだ。
もし道に迷っても、携帯やスマートフォンのGPS機能を使ったり……今までどんなに、文明機器を頼りにしていたのだろう、と由里は一人自嘲する。
由里は、わずかに踏み固められたであろう、獣道といっても良い、それを頼りに歩くだけだった。
「でも……さっきの人」
明らかにそうだった。
「さっき、織田信長を殺そうとした人だよね」
言葉にして、少し震えた。
自分の目の前で、あわや人が死ぬところを目撃するところだった。
見たこともないし、見たくもない。それが、現代人にとっての【常識】だった。
「でもおかしい。あの人、武将には見えなかった。明智光秀って武将じゃなかったっけ」
考えるのはやめて口に出してみることにしたら、疑問が次々とでてくる。
あの恰好は、明らかに由里が教科書などで見て知っている武士の姿ではなく、現代でも葬式などで見る、お寺のお坊さん――のような格好だった。
「つっ……あ、そういえば」
その【織田信長が殺されそうになるシーン】を思い出し、やっと思い出した。
信長を助けた際、由里の左腕が刀にわずかに触れ、怪我をしていたということを。
激しい痛みがあるわけではないので、きっとちょっとした切り傷程度であることを願う。
切り傷。普通であればそんな怪我を負うこともない傷。
確かに、刀傷である。
と、その時だった。
ガクンッ
「わっ…………っ!!!」