【イケメン戦国】*ヒメゴト* 戦国時代に舞い降りた現代の姫
第6章 嗚呼、相棒。其処にいるか
お前の、と言って厳しいまなざしを向ける秀吉。
その矛先は、光秀だった。
「え、どういうこと?」
由里は驚くと同時に、自分の予感が当たったと悟っていた。
秀吉は続ける。
「武将たるもの、持つ刀は一本だけではない。
もちろん主に持ち歩く刀は大抵は決まっているが……例えばその刀が刃こぼれがひどければ刀屋に預ける必要がある。
そうだな……」
秀吉は静かに、流れるようにその剣を抜いた。
しかし抜き切る前に刃を見つめ、やはり、とつぶやき納めなおした。
「光秀、お前は重心を右にかける癖があるのは知っている。これは利き手というのもあるだろうが……そのおかげで、こちら側が良く研ぐ必要がでてくる。
これは、お前が使う刀に酷似しているが? 光秀。
それにこの家紋の刻印、否とは言わせない」
「確かに、その刀は俺のものに酷似している。あとで置き場を調べさせる。
しかし、信長様暗殺未遂に関しては、知らないものは知らないとしか言えないな」
「……秀吉さん、あれは光秀さんではないですよ」
由里は、自分の目にした事実を口にした。
「もっとこう……ガタイが良いというか熊みたいな……とりあえず大きい人です。光秀さんとは似ても似つきません。
あとね、音」
「音?」
「シャンシャンと、鈴の音が聞こえました。
光秀さん、貴方、きっとカマをかけられたんです。
もしこの暗殺が成功していたら、犯人に仕立て上げられて。犯人はきっとその時ほくそ笑んでいるはずです。
自分の存在を知られず人に罪を擦り付けて、人を殺せたわけですから」
由里は理解したのだった。
自分のいた社会の歴史でも、もしかしたら光秀は誰かに罪をなすりつけられたのかもしれない。
そして、謀反を起こした者として知られることとなったのだ――。