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【イケメン戦国】*ヒメゴト* 戦国時代に舞い降りた現代の姫

第2章 夢見る如く


どれくらい経ったろうか。


レーサーという、死と隣り合わせの職業柄、
死への恐怖を恐れない、むしろいつ死んでもおかしくないとさえ思うようになっていた。

だけど、本当に死ぬかも、ということは、
今日が初めて。

本当は、怖かったのか。
自嘲気味に笑っても、遅い。
目を、知らぬ間につぶっていた。

パチパチ…パチ…
(…………?)

やけに、静かだけど。
焼けた臭いは、車の焼けた機械的なソレとは違った。

由里は、恐る恐る目を開けた。






「…………は……?」

世界は、一変していた。

先ほどのいやな臭いは、この立ち込めた黒い煙だった。
火事だろうか。
まだいたるところで火の粉が降ってきているので、火事はおさまっていないのだろう。
ところどころががれきで覆われ、歩くのが大変そうだ。


何よりも、由里に、痛みがなかった。
それ以上に、全くの怪我がない。

先ほど、間違いなければ、車に乗っていて、路面の影響か?車の影響か?はたまた複合的な影響か?制御が効かなくなり、崖から落ちたはずだ。

間違いなければ。

だけど今ここに、事故でボロボロになったはずの自分の愛車はなく、乗ってもいない。
元のままの恰好で、横たわっていただけだ。
そばには自分の荷物を入れたバッグが一つ。

何よりも怪我がない。


ふと、目をこらすと、前方に柱にもたれてどうやら寝ているだろう、男性を見つけた。
規則正しく肩が上下している。

そしてその前方には、長い何かを持った男性が息をひそんで佇んでいるように見えた。
柱の陰になって、寝ている男性からはその男性が見えない位置になっている。

「っ……!?」

由里は目を疑った。
そう、長い何かは、ただの棒ではなく、ギラリと切っ先が光る、刀だった。


また、考えるより先に、身体が動いた。

「危ないっ……!!!」

叫ぶと、両者がこちらを振り向く。
由里は眠っていた男性の元に走り、思わず手を引いていた。
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