【イケメン戦国】*ヒメゴト* 戦国時代に舞い降りた現代の姫
第5章 懐疑心は忠誠心 短気は損気
「その前に……一対一にしてもらいたいって言ったら怒ります?」
「はっ――――!?」
全員の、由里を見る目が鋭くなる。
得体のしれない由里と主君が一対一で話をするなど、どれほどの危険なことがあるか――一瞬にしてそれを感じ取ったのであろう。
今も、剣を抜きそうな形相で由里を睨むのは、秀吉。
「お前、死にたいか――!?」
「秀吉、良い。由里、理由を言ってみろ」
「……ここにいる全員の名前を知らないから、
じゃだめですか?」
「は?」
きっと場違いな答えだったのだろう。
言い訳でもしたら即刻叩き切ってしまいそうな秀吉の剣幕に、由里は嘘などつくつもりはなかった。
くつくつと、信長が笑い声をあげた。
「許可しよう。皆、由里に名を教えてやれ。
三成はむろんのことだが、政宗と秀吉、も貴様は知っているであろう?」
「はい、道中よくしていただきましたから」
「由里は、俺の腕の中で眠ってたんですよ」
にやり、と笑みを浮かべるのは、由里を抱いて馬で走っていた政宗だった。
「っ!!」
由里は、その言葉で馬上での出来事を思い出していた。
最初こそ、腰辺りをつかまれ抱かれていたのは覚えているが、急激な疲れと眠気に襲われた由里は、その後どのように抱かれていたのか、触られたのか、などわかるはずもない。
「政宗の馬で寝たとは、由里、お前は話題に尽きないな。
――明智光秀だ。 信長様の家臣だ」
(明智――光秀……!?)