【イケメン戦国】*ヒメゴト* 戦国時代に舞い降りた現代の姫
第5章 懐疑心は忠誠心 短気は損気
この、いやなムードを破ったのは三成だった。
「お前……ある意味折りが良い」
部屋での信長と由里との言い合いに飽きれつつ、家康は三成を皮肉った。
「はい……? ありがとうございます」
状況が呑み込めていない三成は、家康に礼を言う。
「……」
はあ、と溜息をつき、さらに眉間のしわを増やした家康だった。
確かにタイミングは良かった。
これ以上言い争いをしている信長と由里を見ている暇など惜しいのだから。
今は軍議中であった。各自仕事がある中集まっているので、時間が惜しいと言えば惜しい。
「それで? この小娘をここに呼んだ理由は?」
「由里、自己紹介しろ」
「わかりました」
下座から、由里は皆を見まわした。
三成と政宗を除く3人の重臣は、由里を少し怪訝な目で見ていた。
「わたくし、国元財閥の跡取り娘、国元由里と申します。
職業はプロレーサー。以後お見知りおきを。
あ、それと一応20代なんで、小娘ではありません」
「ざいば……? ぷろれ……?」
(あ、やば。いつもと同じようにしちゃった!)
皆、さらに杞憂な目で由里を見ているのも当たり前だろう。
財閥という概念が生まれたのはおおむね戦前。この戦国時代には存在していない。
さらにカタカナ言葉まで使ってしまった由里である。
「出会ったころも思ったが、貴様は南蛮に詳しいようだな。生まれがそちらなのか?」
「へ? 南蛮? 私は純粋な日本人ですけど」
「に、ほん?」
「はい、日(ひ)の本(もと)と書きます」
「……………!!」
その由里の言葉に、驚愕した。
先ほど、信長がうたっていた唄に、その言葉が含まれていたのだから。
【日の本】。
確かに由里はそう言った。
「貴様…………何者だ?」
信長は、核心をついた。