【イケメン戦国】*ヒメゴト* 戦国時代に舞い降りた現代の姫
第5章 懐疑心は忠誠心 短気は損気
ガタリ。
ふすまを開けて現れたのは、由里だった。
「貴様――」
「お話の最中でした? あ、三成くんじゃなくてすみません。
忘れ物をしたと言ったら、持ってきてくれるとのことで」
悪びれもなく信長に話す由里に、その場にいた皆はぽかんとしていた。
否、特に悪いことをしたわけでもない由里にそんな顔で見つめるのもおかしいが、由里自体が言わば不審者のようなものなので、仕様もないことだろう。
「三成と、随分仲がよくなったようだな?」
「彼が、敬語使わなくて良いって言ってくれたんですよ?」
「……貴様は少し首輪でもつけて飼いならしたほうが良いな?」
「ではその時はまた全速力で逃げますよ?」
売り言葉に買い言葉。
信長と由里の言葉の押収はずっと続くかと思われるくらいだった。
どちらも頭に来ていた分、特に由里は信長がこの城の主君ということも忘れて、言葉を選んでいなかった。
その時だ。
「信長様に由里!!!
信長様、小娘相手に何をそんなに必死なのです。
由里、お前、俺達の主にいい加減にしろ。それ以上侮辱すれば……
――――容赦しない」
止めに入ったのは、信長の右腕である秀吉だった。
その目は、絶対信長を守る、という信念が感じられる厳しい目である。
「っ……そうですね。言いすぎました。ごめんなさい。
この着物、貴方が選んでくれたそうですね?
金糸が使われていて、すごく上品。ありがとうございます」
謝ると同時に。
由里が着物をひらりと見せるようにして礼を言うと、ひそかにザワリとしたのだった。
信長はニヤリと笑みを浮かべた。
「馬子にも衣装とはこのことだな」
「はっ――――」
「由里様、お待たせしました。
……って、皆さま、どうされましたか?」