【イケメン戦国】*ヒメゴト* 戦国時代に舞い降りた現代の姫
第5章 懐疑心は忠誠心 短気は損気
むかしむかし
日ノ本の國にて
天女なるもの、西の空の星光るころ、舞いおりん
その美しきに
身も心も、奪われらん
その強きに
勝利をもたらさん
「知っているか、天女というものを」
「なんです? 信長様」
由里と三成を待ちわびている家臣の一人、明智光秀が怪訝そうに問いかけた。
なんです、の真意は、聞こえなかったということでも、どういうことかを聞きたいわけでも、もちろんない。
らしくない、ということだ。
世迷言か予言にも似た呟きごとを突如発したのだ。
咏(うた)を詠むことはあるだろうが、五句体とは似ても似つかぬものであった。
またそんなものを自分の家臣の前で披露し問うというのは、いつもの自分の主君である信長ではない、と誰もが思っていた。
もちろん、顔にはださないが。
光秀もその一人。顔に怪訝な顔を出さないどころか、面白い、と言わんばかりに少し薄ら笑いを浮かべていた。
「そういう話は、今から来る文献木偶坊(でくのぼう)にでも聞いたらどうですか」
はあ、と溜息をつきながら待ちくたびれて不満声を漏らすのは、徳川家康だった。
「くく、それが良いだろうな」
興味深そうに、一度会った由里を思い浮かべ、伊達政宗は信長に問う。
「由里が、その【天女】と?」
「まだわからん。だが、助けられた時、
――西の空に、輝いていた」
明るい星が。
とつぶやいたところで、声が聞こえた。
「信長様」
「三成か。入れ」